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【本】他者と働く -「わかりあえなさ」から始める組織論 を読んだ

自分の言葉をどうやって相手に伝えるのか、どうしたらより伝わるのかということを考えていたので読んだ。
感想と、自分用のメモ書き。

対話

本書は「対話」をテーマにしている。
対話という言葉を聞いて一番にイメージするような、膝を突き合わせて会話するというようなものではなく、相手を見据え、理解し、伝わるように語りかけることを対話と呼んでいるように思う。
ノウハウで解決できる技術問題と、対話によって関係性を解きほぐす必要のある適応課題に大別し、適応課題をどのように解決していくのかということに向き合った一冊。

適応課題の分類

適応課題には、以下の4つの分類に分けられる。

  • ギャップ型
    • 短期的に合理的な行動と、中長期的なビジョンのすれ違いなど
  • 対立型
    • 異なる目標や価値観を持った集団間で、お互いの求める結果がぶつかってしまう場合など
  • 抑圧型
    • 関係性の中での忖度や配慮によって、問題提起などができなくなっている状態など
  • 回避型
    • 本質的な問題に取り組むことを避けたり、わかりやすい技術的問題として付け焼き刃の対処をしてしまうなど

今向き合っている適応課題がどのようなものかを認知し、アプローチを変える必要がある。

溝を渡るためのプロセス

適応課題に向き合うためのプロセスとして、本書では以下の4ステップのプロセスを提唱している

  1. 準備
    適応課題の存在に気づき、自身の価値観から一歩引いた視点で現状を俯瞰する
  2. 観察
    相手にどのような事情・背景があるのかを知る
  3. 解釈
    相手の状況を理解し、自身の状況と照らし合わせて何ができるのかを考える
  4. 介入
    実際に行動を起こす

要は相手の状況をしっかりと理解し、お互いの正論が成り立つように話を進めるという感じ。
常に相手と自分の関係性を注視し、齟齬が生まれたら準備からまた進めると良いとのこと。

本文中では、相手を巻き込んで自分たちの状況を実際に体験してもらう事例であったり、組織を巻き込んだ意思決定をするために行動を起こした事例などが紹介されている。
「仕事において主人公になれている」時が人が育つときであり、部下がそのような状態になる手助けをするのが上司の役割というのはなるほどと思った。
組織のあり方によってマネジメントの型やアプローチの仕方を変える必要があり、相手に伝わる言葉や伝え方を常に考えていくことが重要。

対話を進めるなかで陥りがちなアンチパターン

一方で、対話を進める中で陥ってしまいがちなアンチパターンもある。

  • 迎合になってしまう
  • 押しつけになってしまう
  • 馴れ合いになってしまう
  • 対話をしている集団だけが孤立してしまう
  • 結果が出ずに疲弊してしまう

何故対話をするのか、どうしていきたいのかの意思をもち、意見をきちんと表明し続けることが大事という話。
対話によって強く結びついた関係が、その他の組織との関係の希薄化につながったり、馴れ合いになってしまうのは、意識しないと避けるのは難しそうだと思った。

感想

本文中では状況や背景を「ナラティブ」と表現している。
自身のナラティブとその正しさをぶつけ合うようなコミュニケーションを避け、相手を観察し、理解し、ナラティブに向き合っていくことこそが対話であり、組織を前にすすめるための手法であるという強いメッセージ性があった。
直前に ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力 (朝日選書) を読んでいたが、他者との向き合い方という点では近しい思想を持っているように感じる。
おわりにの中で語られるエピソードは重く、そこから紡ぎ出される「人間は弱さから逃れられず、自分もそうであったかもしれないということを認知する」という覚悟もまた重い。
伝わらなさを感じる人が読むと、様々な気づきを得られるだろうなと思った。